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エアチェックの夜 8

第8回 クルマ・新宿・アルバイト 2001.4.29


POPS26 1984.1.22

Hero/George Duke
Time Will Reveal/DeBarge
This Time/Block Walsh
The Smlie Has Left Your Eyes/Asia
Magnetic/Earth,Wind & Fire
You Can Still Rock In America/Night Ranger
Bad Boys/Wham!
Karma Chameleon/Culture Club
Cum On Feel The Noize/Quiet Riot
Owner Of A Lonely Heart/Yes
Strange Eyes/Son's Of The Heros
Talking In Your Sleep/The Romantics
Twist Of Fate/Olivia Newton-John
Ask The Lonely/Journey
Jump/Van Halen
Night Bird/Stivie Nicks


1984年、20歳で自動車免許をとり、クルマを買った。
80年型カリーナの4年落ち中古、35万円。
親から金を借り、クルマに詳しい友人の勧めで近所の中古車屋で選んだ。

実は運転はそれほど好きではない。
クルマも嫌いではないが、雑誌を買ったりパーツを変えたりはしない方である。
実際購入した時も、本当は2BOXタイプが好みだったのに、途中で選ぶのが面倒になり、おっさんくさい白のセダンになってしまった。

クルマを買った理由は、単純に女の子を乗せてドライブしたかったからである。
まわりの友人に比べて買ったのは早い方だったので、結構重宝がられ、自慢に思ったりもした。
自分は酒を飲まないので、いつでも運転できる。
友人との飲み会にクルマで出かけ、終電がなくなった後、女の子達を順番に家まで送ったりしたこともあった。
(その後何もなかったけど。)

買った後で気づいたのだが、中古のカリーナにしては後付けのかなり立派なオーディオがあった。
メーカーはパナソニックだが、デッキとチューナーが別になっており、重厚な感じがした。
実際には車内はエンジン音もうるさく、音環境としては大したことはないのだが、スピーカーも立体型のむやみにでかいヤツで、家のどのオーディオよりも音の広がりが違うように感じた。

クルマは持っているだけで駐車場代・保険・税金などカネのかかる道具である。
ガソリン代・有料道路料金など、走ればなおさらカネのかかるしくみだ。
買ったからにはカネがいる。
それまで短期のちっぽけなアルバイトばかりしていたが、ちょうど夏休みなので、少し長く勤めてみようと思い、バイト情報誌で探すことにした。

今でもよく覚えているが、バイト探しでそのとき候補に残ったのは3つである。
 ・ゴルフ練習場の球集め(品川)
 ・飛行機内の清掃(羽田)
 ・雀荘の店員(新宿)
条件を見ると、どれもだいたい夕方5時くらいから夜12時くらいである。
よく考えると、品川も羽田も夜12時に終わると電車がなく家に帰れない。
そこで新宿を選んで連絡し、店で話を聞くことにした。
場所は西口だし、フリー雀荘ではないようなので、あまり不安はなかった。
ヤバそうだったらやめちまえばいい。

店は西口のカメラ屋のあるビルの4階だった。
「実はね、働いてもらう時間帯は、夜11時から朝9時まで」
いきなり話が違う。だって夕方5時から夜12時までって書いてあったじゃん。
「ホントのこと書くとね、情報誌が載せてくんないのよ」

断ろうかとも思ったが、クルマは買ってしまったし、また別の仕事を探すのも面倒である。
ヒマだったこともあり、その店でとりあえず8月の1ヶ月間働くことにした。

自分の他に早稲田と明治の学生バイトが延べ20人ほどおり、サークル仲間が交代で働いているようだった。
自分のような情報誌から見つけて入店したヤツはいなかったが、夜はバイト2人のことが多く、人つきあいの苦手な自分でもそれほど困ることはなかった。

その店ではバイトが客と打つことはまずない。
お茶やおしぼりを出し、注文があればカレーやラーメンなどの食事も作る。
後はタバコを売ったり、パイや卓の掃除がほとんどで、始発が動く時間にはだいたい客は帰るので、ヒマな時間もけっこう長かった。
はっきり言って、ラクなバイトだったのだ。

とはいえ、夜中ずっと起きて働くので、昼間は寝なければカラダが持たない。
クルマなんか乗ってる時間もなくなってしまったのだ。
何のために働いているのか、わからなくなってしまった。

そのころ流行った曲に、ナイト・レンジャーの「You Can Still Rock In America」がある。
この曲はクルマを運転中に聴くと、ついスピードを出したくなるようなサウンドだ。
この「飛ばしたくなる」曲の元祖としては、タイトルもそのままの、パープルの「Highway Star」「Speed King」などがある。
ナイト・レンジャーの音はパープルよりも明らかに「軽い」のだが、この曲の「飛ばしたい」衝動はパープルよりも上だ。
曲のテンポと、エドワード・ヴァン・ヘイレン風の半ばキレちまったツイン・ギター。
のちのボン・ジョヴィやデフ・レパードのようなコーラスのサビ。
だが決して重厚ではなく、メタルでもない。

ナイト・レンジャーはツイン・ギタリストが売りだったり、バラードになるとドラマーがボーカルをとったりする、バラエティに富んだ不思議なバンドだ。
そういった意味では、イーグルスのようなバンドでもある。
シングル・カットもバラードが多い。
アルバム「Midnight Madness」のラストの「Let Him Run」は名曲だと思う。
「飛ばしたい」衝動が強いのはこの「You Can Still Rock In America」1曲だけだ。

当時この曲を含めた「飛ばしたくなる」曲ばかり選んでテープを作り、友人の運転で深夜の首都高速を本当に「飛ばした」こともあった。
クルマを手に入れたばかりの若い男というのは、どいつもこいつも単純にバカなため、同じようなことを考えるものだ。「早いヤツがエライ」。
そして免停になったり、事故を起こすヤツが続出したりして、みんな徐々におとなしくなっていく。

バイトの店には小さなラジカセがあり、客が全員帰った後は、朝まで音楽をかけながらバイト仲間と店の掃除をしたりした。
ときどき真夜中に「You Can Still Rock In America」がかかり、掃除が急にはかどったりするので、大笑いしたこともある。
ダンス音楽とは全く違うのだが、「カラダを早く動かしたくなる」曲なのだ。

クルマを「飛ばす」つもりで聴くはずだった曲を、クルマに乗れず深夜の新宿で聴くことの矛盾。
笑うしかない昼夜逆転生活は8月いっぱい続いた。
31日間で休みは4日だけだった。
バイトと寝ること以外、本当に何もしなかった。

その後バイトも週一に変わり、ようやくクルマにまともに乗れるようになったのは、買ってから2ヶ月後のことだ。
結局大学卒業までこの店で毎週働いた。
カタギの自分にとって、貴重な2年半の体験だったとも言える。

今でも運転中にラジオでこの曲がかかると、「飛ばしたい」衝動と、あのころの深夜の新宿の光景が、交代でアタマの中に押し寄せるのだ。


夜もすっかりふけて参りました。
高速道路を走行中のドライバーのみなさま、この曲には充分ご注意下さい。
ナイト・レンジャーで、「You Can Still Rock In America」。


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