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ビッグイシュー日本版

ビッグイシュー日本版を買った。

ホームレスしか売ることのできない、ホームレスの自立を目的とした雑誌である。
イギリスで創刊され、世界中で発行されているらしい。
日本でも関西で販売が始まり、先月から東京でも売られるようになった。
東京での販売開始を知ったのは新聞記事である。

ネットで調べると新宿南口で販売とあった。
その日たまたま東京ドームでK-1を見る予定だったので、新宿に寄ってみた。
南口では拾った雑誌を集めて売るという違法な露店が、相変わらず派手に営業中であ
る。
当然そこでは売っていない。
少し探すと、いかにも人の良さそうな感じの初老の夫婦が、一人の男とにこやかに話
しているのが見えた。
男は夫婦に雑誌を渡している。
あれだ。間違いない。
夫婦はその男に励ますような言葉をかけてその場を去っていった。

夫婦が離れたのを確認して、その男に近寄ってみると、そばに雑誌の束が置いてある。
「ビッグイシューですか?」と声をかけてみた。
男は立て続けに客がきたので少し驚いた様子だったが、「はい」と答えてくれた。
「買います、買います」
思わず2回も言ってしまった。
200円を払い、1冊受け取る。
何か言おうかとも思ったが、「がんばってね」というのもなんかエラソーな気がして、
そのまま何も言わずにその場を離れた。

内容についてはいろいろな意見があるようだが、率直な感想を言えば「きちんと作っ
てあるな」という印象だ。
オールカラーだし、絵や写真、レイアウトも普通の雑誌と遜色ない。
記事内容も結構バラエティに富んでいる。
ビョークのインタビューまであった。
「これ、ビョークはノーギャラかなあ」などと下品なことを考えた。

売り方が変わっているだけに、社会性の強い機関誌系のようなものを多少想像してい
たのだが、そうではないようだ。
デパートやCD店のフリーペーパーに近い感じである。
この内容であれば、「雑誌として買う」ことだけ考えても、抵抗は全くない。

社会的に困っている人を支援するしくみや団体はたくさんある。
しかし弱者救済を掲げながら、反体制色が強すぎる怪しい団体など、そのやり方にな
かなか賛同しづらい場合もある。
目的に対して手段が支持されなければ、行動する意味もないと思うのだが、取り上げ
る問題には難しい面が多く、なかなか簡単ではないのだろう。

そういう意味では、ビッグイシューが世界中で販売されてきた理由も、紙面を見て多
少わかった気がする。
目的のためには、この雑誌がやはり売れなければダメなのだ。
つまんない雑誌ではリピーターが確保できない。
見栄や流行で買うヤツがいたって構わないと思う。
売れればそれだけ目的に近づくのだ。

自分はなぜビッグイシューを買う気になったのだろうか。
ホームレス自立を支援したい。
その気持ちが全くなかったわけではない。
しかしながら「支援する自分」の姿に実は多少酔っているのも否定しない。
またホームレスしか売ることができないという、販売形態自体に好奇心がわいたこと
も事実だ。
以前オウム真理教が世間を騒がせた頃、有楽町で信者が広報誌のようなものを路上で
配っていたが、自分はわざわざ道路を横断して受け取りにいったこともある。
全くもって弱者支援などという崇高な行いとは、チカラいっぱい縁遠い下世話な人間
なのだ。
関係者の方からすれば迷惑な話かもしれない。
そんな乱れた心理の中、吸い寄せられるように買いに行ったのである。

ともあれ東京でも始まった、ビッグイシュー販売。
雑誌としてもおもしろいし、買うことでホームレスの自立に協力したという達成感?
もある。

また次も買ってみたい気になった。
次回も同じ人から買えるだろうか。
なぜだかよくわからないが、少しだけ新宿が楽しくなってきた。

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コメント

音楽のところばかり見ていたので、気がつきませんでした。

私も「ビッグイシュー」買った事があります。ダイドの表紙の号でした。
TVで見て知っていて、新宿を歩いていたら売っていたので買いました。そして「がんばってください」と言いました。

しかし、後でよく考えてみたらその方は胸にプラスティックの看板を着けていず、持っていた号も何種類か。「あ~騙されたかも」どうやら売っていた方は捨ててあった物を拾って、まるまる200円儲けていたようです。

それはそれなりに自活という点で評価できると思いますが、中身が純粋な音楽雑誌ではないのですね。
主義主張が合えばそれはそれでいいのですが、ちょっと私の考えとは異なる雑誌でした。常にノンポリでいたい私としては、あまり政治的な事に関わりたくはないのです。
とはいえ、頼まれてデモに参加した事があります。もちろん考えに同調した事に関しては数知れず署名もして来ましたよ。

SYUNJIさん、ビッグイシューまだ買ってますか?

投稿: hello nico | 2004.06.20 22:56

nico様、こんばんは。
ビッグイシュー、まだ買ってますね。
最近は渋谷で買うことが多いです。
今月はジョージ・マイケルの記事がありました。

ただ昨今の世界情勢を反映してか、内容がかなりハードになってきていますね。正直、雑誌としてだんだんおもしろくなくなってきています。

自分も政治的活動に関しては関心のないタイプですが、ビッグイシューの主旨そのものは悪いとは思っていません。
デモも署名もしない自分ですが、このくらいの賛同はしてもいいかなくらいに考えています。

投稿: SYUNJI | 2004.06.20 23:31

私もビッグイシューの主旨には賛同します、彼らには自立して欲しいもの。
ただ本の内容が偏っているのが気になりました。
色んな意見があって双方の良い所をチョイスできるような、または説得力のある納得のゆく内容であったら良かったんですけどね。政治的な意見は押し付けられるとひいてしまいます。

投稿: hello nico | 2004.06.22 00:33

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