聴いてみた 第155回 ブロンディ その2

引きこもり中高年の聴いてみたシリーズ、2年ぶりのブロンディ
3枚目のアルバム「Parallel Lines(恋の平行線)」を聴いてみました。

Parallel-lines

「Parallel Lines」は78年発表で、プロデューサーはこのアルバムで初めてブロンディを手がけることになったマイク・チャップマン。
見事全英1位・全米6位を記録し、この後チャップマンはブロンディが82年に解散するまでのアルバムを全てプロデュースしている。
ただしこのアルバム制作においてはチャップマンさんとメンバーの間で結構衝突もあったらしく、デボラの歌い方やメンバーの演奏にいちいち注文をつけるチャップマンに対して、デボラが泣いてトイレに立てこもって抵抗したりベースのナイジェル・ハリソンが楽器を投げつけたりといった偏差値のヤバイ高校みたいな騒動もあったそうだ。

収録されているうちの以下の曲はほぼリアルタイムで聴いている。
・One Way or Another(どうせ恋だから)
・Fade Away and Radiate
・Will Anything Happen?(どうなるかしら?)
・Sunday Girl
・Heart of Glass

いずれも当時最先端の一流音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」でエアチェックしたものだ。
今さらながら驚くが、よくあの番組でこれだけオンエアしたもんだと思う。
大ヒットした「Sunday Girl」「Heart of Glass」は他の番組でもよく聴いたけど、「Fade Away and Radiate」なんて日本ではシングルカットもされてないよね?
たぶん新しいアルバムとして特集でも組んだのだろう。
レコード会社の圧力なのか柏村武昭の忖度だったのかは不明だが、当時は日本もブロンディにとって重要なマーケットだったと思われる。

今回聴いたのは2001年発売のリマスター盤である。
前回同様知ってる曲がいくつかあるので、緊張感は全くない。
柏村武昭に感謝しつつ余裕の鑑賞としゃれこんでみました。

・・・・・聴いてみた。

1.Hanging on the Telephone
全英5位のヒット曲だが、彼らのオリジナルではなく、ジャック・リーという人の作品で76年にナーブスというバンドが発表している。
イントロの電話のコール音、ノリのいいリズムがよい。

2.One Way or Another(どうせ恋だから)
この曲も当時から聴いているが、こんな邦題だったとは知らなかった。
アルバム中最もパンク色が強く、デボラがガラ悪く「げちげちげちげちゃ」と歌う。
「Heart of Glass」「Sunday Girl」に続いて聴いたので、最初は雰囲気の違いに戸惑った記憶がある。
2013年にワン・ダイレクションがカバーしたそうだ。

3.Picture This(恋のピクチャー)
アルバムに先行して発表されたシングルで、全英11位を記録。
リアルタイムではなく聴いたのはかなり後だった。
楽しそうなメロディだが、歌詞はどこか物悲しい感じ。

4.Fade Away and Radiate
どんより重い進行でどこかプログレの香りがするなあと思っていたら、ロバート・フリップがギターで参加していた。
この頃クリムゾンが停滞しててフリップもヒマだったという話。
タイトルは「熱い想いも徐々に冷めていく」といった意味らしいが、この後発表された「Dreaming」の歌詞にもこの言葉が登場する。

5.Pretty Baby
初めて聴く曲。
なんとなく古き良きメロディで、タイトルをコーラスを交えてガヤっぽく歌う。

6.I Know But I Don't Know
邦題は「知ってるかい?」。いや、知らんがな。
ギターのフランク・インファンテが作った曲で、そのせいか間奏ではかなりギターが主張してくる。
サウンドは終始不協和音なゆがんだ感じ。

7.11:59
60年代っぽいメロディを70年代風にアレンジしたようなサウンド。
行き急いだリズムの割にデボラが余裕で歌う不思議な曲。

8.Will Anything Happen?(どうなるかしら?)
これもジャック・リー作の曲で、前の曲と同じようなテンポでドラムはどたどたしゃりしゃり鳴るが、歌詞がそれほど詰め込まれておらず、やはりデボラは余裕で流す感じ。

9.Sunday Girl
イギリスでは1位の大ヒット曲。
だがアメリカではなぜかシングルカットされなかったそうだ。
初めて知った・・
アルバムの中では一番明るく、デボラが楽しそうに歌う。
以前聴いたベスト盤には歌詞の一部がフランス語のフレンチ・バージョンが入っていた。

10.Heart of Glass
中学生の頃に最初に聴いたブロンディの曲がこれ。
映像とともに刷り込まれたので、以来デボラの顔と体ばかりに気をとられる羽目になった因縁?の1曲である。
あんなの中学生に見せたらそりゃあ勉強なんかしなくなるよ。(言い訳)
この高いキーで歌うデボラを基軸としてブロンディを覚えたので、その後他の曲を聴く都度バンドとデボラの多様性に驚いていた。
後半特に印象的なドラムの音だが、ドラマーのクレム・バークがクラフトワークビージーズのサウンドを参考にしたとのこと。
このディスコサウンドに対して、歌詞は決して楽しくはなく、昔好きになった男が急に信頼できなくなったことで、以来アタシはすっかりガラスのハートになったのよという切ない女心を歌った内容。
その信頼できない男のことを「mucho mistrust」(=大きな不信感)とスペイン語を交えて表現しているが、これは古い黒人スラングらしい。

11.I'm Gonna Love You Too(好きになりそう)
これは初めて聴いた。
ノリのいいコミカルな曲だが、バディ・ホリーのカバーだそうだ。

12.Just Go Away
デボラの作った曲。
彼女とメンバーのやや粗野な掛け合い。
ブロンディらしいと言えばその通りだが、造りがややガサツであまり好みの音ではない。

以下はボーナストラック。
13.Once I Had a Love
「Heart of Glass」のデモバージョン。
デボラの声はそれほど違わないが、楽器の音はやはりまだシンプル。
この後あのディスコ調のサウンドとアレンジがどっさり乗っかり、大成功・・という結果に。
確かにこのデモ版のままだと、あそこまでヒットしてないだろうね。

14.Bang a Gong(Get It On)
ご存じTレックスの名曲をライブで収録。
好きな曲ではあるが、デボラがなんとなく気だるそうに歌うので高揚感はそれほどない。

15.I Know But I Don't Know
6曲目のライブバージョンだが、歓声はほとんど聞こえない。
スタジオよりも不協和音はさらに増幅されて、エンディングではスピードもアップ。
ただやはり聴いててあまり楽しくはない。

16.Hanging on the Telephone
これもライブだが、時期は少し後の1980年のステージ。
観客もノリノリで、この曲がライブ向きであることがよくわかる。


聴き終えた。
やはりあらためて感じるのはデボラ・ハリーとブロンディの多面的な器用さである。
大ざっぱに分けると、60年代風のオールドなポップスと当時流行のパンクを中心に構成されているのだが、そのどちらも、またオリジナルもカバーも問題なくこなしていると思う。

ただし。
個人的には「恋のハートビート」よりもパンクやプログレ色が濃い分、全体的な評価はやや厳しくつけたくなるレベル。
聴いてた曲は多いが、音の好みはかなりはっきりと分かれる。
「Hanging on the Telephone」「Sunday Girl」「Heart of Glass」は好きだが、それ以外はちょっと・・という感じ。
さらに前回聴いた「恋のハートビート」もそうだったが、初めて聴く曲にあまり感動がなかった、というのが正直な感想になる。

「Heart of Glass」はデモ版でわかるとおり後からディスコやテクノのアレンジが加えられて大ヒットしたが、デボラはすでにこの頃ディスコサウンドなんてダサい音楽だと思っていたそうだ。
それでも「まあ1曲くらいダサいディスコ調があってもいいか」と考え、マイク・チャップマンの意向に逆らいもせず、アレンジも許容したらしい。

いろいろ調べるとやはりチャップマン先生の指導がバンドに大いなる成功をもたらしたのは間違いなさそうだ。
チャップマンが彼らの音に大きく手を加えたのは、そのアレンジこそが売れると確信してた部分もあるが、それ以前に男どもの楽器演奏技量がいまいちだったと感じていたところもあったらしい。
結果的にこのアルバムは大ヒットしたので、メンバーもチャップマンの手腕を認め、以来がっちりと手を組み、ヒットアルバムを世に出し続けることになる。

ジャケットは腰に手を当て仁王立ちするデボラを中心に存在感のない男たち(失礼)が横並びという集合写真。
デボラの表情も固く、今見ると内容の割にはちょっと地味なアートだ。
裏は色っぽく歌うデボラの姿なので、こっちの方がいいじゃんと思うが・・
背景が黒白の帯になっているのは当時の流行を採り入れたもの、という解説がネットのあちこちに書かれているが、そう言えば確かにこの頃ファッションでもモノトーンが流行ってたなぁ・・とガサガサな記憶がよみがえった。

というわけで、「恋の平行線」。
正直なところ「恋のハートビート」ほどの盛り上がりはありませんでしたが、やっと聴けたことで安堵しています。(手遅れ)
残る70年代の未聴盤「妖女ブロンディ」「嘆きのブロンディ」も早めに片付けたいと思います。

 

| | コメント (0)

«行ってみた 第73回 堺・京都・大阪